知らない間に戦争に加担している、というテーマはよくわかる。しかし、その描き方は、あまりにもまともすぎないだろうか?
戦争説明会での瑛太の発言.
「最初から戦争を前提に話が進められているじゃないですか」
それに対して原田知世は、こう切り返す.
「黙っていたことは認めたことです。それが民主主義のルールです!」
これが見る者の心にグサリと突き刺さる、とパンフレットには書いてあった。
私の心には突き刺さらなかった。そんなことは自明の理、分かりきったこと、あまりにも正論のやり取りに、返ってビックリしたくらい、この映画って、意外とまじめなんだと。
そのまじめさを絵に描いたように物語は進む。終盤は江口洋介が命からがら逃げ惑い、瑛太の死にも直面する。ブラックユーモアの体裁を取りつつ、あくまでも正攻法で戦争の怖さを描こうとしている。
その意図はわかっても、ほとんど感情移入できない。当然のごとく、江口洋介と原田知世の真に結ばれるラストシーンも感動とはなりえない。
何か方法が間違っている。何かが足りない。それとも、私が戦争というものに対して、他の人よりほんの少し知ったかぶりしているせいだろうか?
一般的に戦争について全く知らないとされている人たちには、この映画を見て、戦争への巻き込まれ方の怖さを仮想体験できたのだろうか?