ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『村八分』(近代映画協会=現代ぷろだくしょん1953:今泉善珠)

 ラピュタ阿佐ヶ谷モーニングショーにて、『村八分』(近代映画協会=現代ぷろだくしょん1953:今泉善珠)を見る。昭和の銀幕に輝くヒロイン[第40弾]中原早苗特集の1週目である。800円(会員)。
 村ぐるみの不正選挙を静岡の新聞社に投書した中原早苗は高校2年生。通信出張所の山村聡が取材に来る。ガードが固い村人たち、土建屋・菅井一郎などの妨害にあいながらも、なんとか記事にする。それが話題となり、警察が動いて、末端の村人たちが拘留され罰金刑を食らってしまう。
 そこから中原早苗一家(藤原釜足英百合子の両親と中学生の妹)への村八分が始まる。それをまた新聞・ラジオが取り上げ、さらには法務局が人権擁護の立場から乗り出して来たり、全国から激励の手紙が山のように届いたりと、一躍時の人となる。
 しかし、村八分は相変わらずで、暮らし向きはジリ貧状態。畑を耕す馬も貸してもらえず、中原早苗が学校を長期欠席しての畑仕事。釜足が夜逃げを提案したりするが、妻の英百合子に「ご先祖様に申し訳ない」といさめられたり、早苗の担任・乙羽信子の母親からの手紙にはげまされたりして、なんとか家族で力を合わせて頑張っていこうと確認しあう
 そんなとき、早苗の学校で全生徒集会が開かれ、早苗一家を支援しようと決議される。
 畑仕事をしている早苗一家、そこにやってくる高校生たちの銀輪部隊。伊福部昭が「仕事の歌」をベースにした音楽が重く鳴り響く中を、明るい希望に満ちあふれた高校生たちがクワやスキで富士山裾野の大地を耕すラストシーン。ちょいと感動的でもあり、明日への展望が期待できる終わりかたでなかなかよい。
 中原早苗もこれがデビュー作とは信じられないくらい、演技がしっかりしていて、後年のしたたかで可愛くてたくましい女性像を、この作品でもしっかりと見せてくれて、素晴らしい。