ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『南極料理人』(2009:沖田修一)


 銀座テアトルシネマにて『南極料理人』(2009:沖田修一)を見る。1200円(前売り1500円を300円引き)、パンフレット700円。
 ほほえみ王子・堺雅人の魅力が映画全体の魅力にオーバーラップしたような作品である。
 南極大陸昭和基地よりさらに奥地1000kmも入った、富士山よりも標高が高いドームふじ基地。植物も動物もバイキンも何にも生息しない、あたり一面雪原のみの世界。そこで越冬する8人の男たちの暮らしぶりを、いくらでも爆笑コント風に描けたかもしれない。
 たとえば、キッチンでおにぎりを作っている堺雅人、そこに防寒服に身を固めたドクター・豊原功補が自転車を持って顔を出す。「西村くん、体重何キロだっけ?」その問いの意味がわからず一瞬の間。場面変わって、基地のスピーカーから流れる音楽、雪原のなかで自転車をこぐ豊原、その後ろに乗って「おいしいおにぎりができました」とお昼を知らせる堺。このシーンはカット割りをうまくスピーディーに処理すれば、大爆笑になるところ。
 若い沖田修一監督の力量不足もあるのだろうが、それを逆手に取って、無理な笑いを取らずに自然な流れに沿って、撮っている。それが、そこはかとなくあたたかみのある微笑の連続シーンへとなっているわけである。
 長編第1作でこれだけのおもしろみある作品を作り上げた32歳の沖田監督、次回作が楽しみである。