ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『すべては海になる』(2010:山田あかね)






 某試写室にて『すべては海になる』(2010:山田あかね)を見る。無料、小さなパンフレット付き。
 書店員・千野夏樹(佐藤江梨子)は過去にいっぱい男性とつきあい傷つき、本によって心を救われた。それを少しでも多くの人と分かち合いたいと「愛のわからないひとへ」というコーナーを設けて、お気に入りの本を陳列している。
 高校生・大高光治(柳楽優弥)は学校ではいじめられ、家庭はバラバラ、でも彼なりに何とか家庭を立て直したいと考えている。
 そんな二人が、出会い、すれ違いながらも、海に励まされるかのように希望を持って生きていこうとする。
 予想外にいい作品である。
 まず、書店員の実態をしっかりと描いたところが日本映画始まって以来かと思えるほど、実によい。店長・松重豊、文学小姑・猫背椿、夜はキャバクラ嬢藤井美菜、まじめな文学青年・岩瀬亮、漢字が読めない・吉川純広、と個性的な店員たちをしっかり描きこんでいる。出版社営業マン・要潤を単なるプレイボーイとしてではなく、小説をいかに売るかということをまじめに語らせているのも好感が持てる。
 劇中劇のヒロイン・安藤サクラはいつにもまして好演。このような汚れ役やら三枚目やらは彼女の一手専売となりつつある。
 作家に扮した村上淳、いつもながら変幻自在になり切る術は彼特有のもの。今回もしばし彼とはわからず。
 わからずと言えば、柳楽の母親に扮した渡辺真起子、いつもは我の強い役が多いが、今回はめずらしくおとなしく控えめな、しかし内に秘めた頑固さは持ちつつという、難しい役に挑戦。これが成功して最後まで誰だかわからずじまい。
 『戦慄迷宮 3D』(2009:清水崇)では別人28号かと思えるほど太ってしまった柳楽優弥、やはりダイエットしたかというくらい元の体型に戻って演技の感も戻ったかと思ったら、こちらが先の撮影ということ。じゃ、なぜ太っちゃったの?(現在はまたやせたらしい)
 ヒロイン・佐藤江梨子は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007:吉田大八)、『秋深き』(2008:池田敏春)、と確実にステップアップ。この作品では過去の役柄よりも普通に近い女性を素直に演じていて、よりグレードアップしている。日本映画を代表する女優になる日も近いぞ!
 心を病んでいる人も健全だと思っている人も、読書好きな人もそうでない人も、みんなにお薦めの作品『すべては海になる』、ぜひ見てください。
 2010年1月23日から、新宿バルト9、梅田ブルク7にて上映。

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