ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『女たちは二度遊ぶ』(2010:行定勲)


 

 

 

 

 
 新宿バルト9シアター3にて『女たちは二度遊ぶ』(2010:行定勲)を見る。1800円(レイトでも割引なし)。
 『どしゃぶりの女』 相武紗季柏原崇
『自己破産の女』水川あさみ高良健吾
『夢の女』小雪小柳友
『平日公休の女』優香、塚本高史
『つまらない女』長谷川京子ユースケ・サンタマリア
1話25分前後で全5話からなるオムニバス映画。
 喫茶店にいる小説家(ユースケ・サンタマリア)。原稿が書けなくて、頭をかきむしっては悩んでいる。そのようすを迷惑そうな、非難する態度で見ているウェイトレス。やがて後ろの席にいる男同士の会話「忘れられない女」というフレーズが耳に入ってきて、思わず聞き耳をたてる小説家。そのようすを非難するウェイトレス。小説家はウェイトレスを「シッシッ」と手で追い払い、会話から着想を得て小説を書き出す。
 と、こんな感じで第1話『どしゃぶりの女』がスタートする。1話終わるごとに「きょうも小説家は書けなくて悩んでいる」の字幕タイトルが入り、小説家とウェイトレスのやりとり、近くの客同士の会話の盗み聞き、そしてお話がスタート、というパターンは変わらず。
 でも3話、4話と進むうちにウェイトレスの態度が変化する。「先生、小説読みました。おもしろかったです。頑張ってください」とコーヒーのお代わりサービス。このウェイトレスが実にいいのだ。つっけんどんな態度から満面の笑みまで、表情豊かである。彼女とユースケ・サンタマリアが、散漫になりがちなオムニバスをきっちりとつないで引き締めている。
 4話とも女と男、二人の濃密な世界を描いて味わい深い。どれがいいかと言われれば、相武紗季柏原崇の二人だけで進行する「どしゃぶりの女」である。相武紗季のおいしそうに弁当やパンをパクつくあの表情、それだけで演技賞ものである。
 4話までが原作・吉田修一、脚本・伊藤ちひろ。5話目の『つまらない女』は伊藤ちひろのオリジナル脚本。
 締め切りが過ぎても書けない小説家。そんなら自分のことを書いてみたら、と編集者・津田寛治に言われて書き始める。
 長谷川京子ユースケ・サンタマリア、この籍を入れてない夫婦のお話。小説が書けないのは、つまらない女・長谷川京子のせいだと決めつけ、別れてしまう。妻が出て行ったらますます書けなくなってしまう。そこへ、女の母親から事故の知らせ、、、。
 実にいい話なのだ。つまらないと思っていた女が、お茶目な面も持ち合わせている味わい深い女だったと再認識するのだ。
 先の4話に比べてもダントツで出来がいいし、何よりも心豊かになる。夜、わざわざ駆けつけて、1800円払っただけの価値は充分にあった。行定勲に拍手、拍手。

下記をクリックしてください。映画ブログ一覧の「日本映画(邦画)」あるいは「映画監督・映画俳優」を再度クリックすると「ぴくちゃあ通信」のランキングが表示されます。
[https://movie.blogmura.com/ にほんブログ村 映画ブログ]