『シグナル 月曜日のルカ』(2012:谷口正晃)を新宿ピカデリー・スクリーン10にて見る。前売券1300円(割引1000円)、パンフレット700円。
映画デビューというか女優デビュー作となる三根梓(みね あずさ)の目の力強さがすばらしい。西島隆弘との最初の出会いで斜めから相手を見据える目の鋭さ、相手を見すかしているようで、実際は何者にも心を閉ざした目。
やがて、西島との交流からしだいに心が溶け出し、柔らかくなる目。ラスト、愛を確認し合った後のダイヤモンドのように輝く目。
この作品を見ることにより、三根梓という女優の誕生・成長ぶりに立ち会えたことに、素直に感動してしまった。それほどまでに可能性を持った素晴らしい女優である。
相手役の恵介=西島隆弘は、持ち味の笑顔で、ルカ=三根梓をやさしく包み込んでいく。まさに適役。
過去の男、レイジ=高良健吾は凶暴さと繊細さの二面性をストレートに演じていて、彼ならでは演技。
支配人=井上順の飄々さが楽しい。その奥さん兼モギリ兼売店のおばさん=梅沢昌代のルカと恵介に向けられる笑顔に暖かみがあふれでている。
ルカのおじいちゃん=宇津井健は、孫に対する愛情と映写技師としての誇りを、短いシーンながら巧みに演じていて、さすがベテランの味である。
恵介の弟・春人=白石隼也は直情型の高校生を素直に演じ、『スノーフレーク』(2011:谷口正晃)よりは、確実にレベルアップしている。
レイジへの一方通行な愛に賭けるさおり=緑友利恵は、デビュー作『魔法遣いに大切なこと』(2008:中原俊)からすべて見ている。徐々にステップアップして、今回はもっとも演技が要求されるシーンも無難にこなし、成長の跡がうかがえる。
恵介・春人の父=おかやまはじめは、ギャンブルに身を持ち崩すという彼にとっては珍しい役どころをほんの少し息子への愛情を感じさせながら好演。
恵介・春人の母=宮田早苗は、夫にせがまれるままにずるずると金を渡してしまうダメな女をいつものやくどころを無難にこなしていた。
日曜日のアンナ=趣里は、水谷豊・伊藤蘭夫妻の娘で今作が映画デビュー。イメージショットのみで演技がどうのこうの言えるシーンはなし。
この作品のもうひとつの主役は、名画座=銀映座、そして映写室。これほどまでに映写機へのフィルム装填の仕方を懇切丁寧に描いた作品が今までにあっただろうか。名画座への愛に満ちあふれた作品でもある。
『時をかける少女』(2010)、『乱反射』(2011)、『スノーフレーク』(2011)と着実な歩みを見せてくれる谷口正晃監督。この4作目『シグナル 月曜日のルカ』でひとつの高みに達したようである。その確かな演出力により、すばらしい女優を育ててくれてありがとう!
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