ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『桐島、部活やめるってよ』(2012:吉田大八)




 『桐島、部活やめるってよ』(2012:吉田大八)をユナイテッド・シネマ豊洲スクリーン11にて見る。1500円(会員)、パンフレット700円。
 すばらしい!
 「金曜日」が登場人物の視点ごとに繰り返し描かれる冒頭では、身体がふるえるほどの快感に打ちのめされてしまった。
 高校生たちの群像劇を、これほどまでに生き生きと繊細に、ひとりひとりが主人公であるかのように描ききった作品があっただろうか。
 何よりも、帰宅部・菊池宏樹に扮した東出昌大(24歳)の表情が実にいい。スポーツ万能、成績も優秀、でも何に対してものめり込めない冷めた自分がいることに対する不安感。それらを彼のたたずまいそのもので演じきった凄さ。映画初出演とはとても思えない存在感である。
 同じ帰宅部で天然パーマの竜汰に扮した落合モトキ(22歳)もいい。数多くの青春映画に出演し続けてきた彼のキャリアの中では最高の演技である。
 さらに同じ帰宅部でバスケ仲間の友弘に扮した浅香航大(20歳)、これまた映画初出演ながら、存在感バツグンである。
 女子グループ帰宅部で桐島の彼女である梨紗に扮した山本美月(21歳)、映画初出演ながらルックス抜群で女王様ヒロインとして今後に充分期待できる。
 その腰巾着で宏樹の彼女・沙奈に扮した松岡茉優(17歳)、撮影当時も本物の高校2年生であった彼女としては、イキイキと無邪気な小悪魔を演じていたようである。
 バトミントン部の宮部実果に扮した清水くるみ(18歳)、こちらも高校2年生であったが、部活に真剣に打ち込みたいが、女子グループから仲間はずれにされたくない。さらには、梨紗たちからちょっとバカにされている風助への恋心もあり、という揺れ動く心のひだを巧みに演じていた。
 その女子グループで梨紗とも実果とも等間隔でつきあいつつ、冷静な目でまわりを眺めているクールビューティ・東原かすみに扮した橋本愛(16歳)。今後、どれだけ伸びて行くんだろうというそら恐ろしいまでの可能性を秘めた現役高校2年生である。
 桐島がいなくなって正リベロの位置をつかんだバレー部・風助に扮した太賀(19歳)、いつも以上に体当たりでバレー練習に取り組んでいて、好感がもてる。
 そのバレー部副キャプテン・久保に扮した鈴木伸之(20歳)、女子からゴリラのニックネームで呼ばれている風貌ではあるが、映画初主演ながら「劇団EXILE」で鍛えた演技力はしっかりしていて、二代目・高橋努の予感がする。
 宏樹に片想いする吹奏楽部・沢島亜矢に扮した大後寿々花(19歳)、バスケ遊びをしている宏樹を見ながら屋上でサックスを吹く彼女がせつない。自分がぐらついていては部長として吹奏楽部をまとめることができない。片想いに決別したあとの吹奏楽演奏の会心のハーモニー、満面の笑み。キャリアが2番目に長い彼女でなければできない演技であった。
 その部長の片想いをひそかに応援する1年生・詩織に扮した藤井武美(17歳)、今後の活躍に期待しよう。
 映画部の副部長・武文に扮した前野朋哉(26歳)、石井裕也監督初期作品の常連俳優らしいが、私は今回が初めて認識したような気がする。とぼけた味わいある演技で、これから重宝されそうな予感が。
 そして、映画部部長・前田涼也に扮した神木隆之介(19歳)、キャリアとしてはこのメンバーではナンバーワンのベテラン。これまでの少年顔を隠すかのように黒縁メガネで地味に登場し、クライマックスでは映画への熱い思いを爆発させていた。今後は素顔でいかに大人の役柄を演じられるかが、勝負どころであろうか、、、。
 ところで、桐島って何者? この疑問が残ってしまうスッキリ感のなさが現代の状況を現しているのかもしれない。

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