ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

中川加奈





以下の記事は、1996年12月にまとめたものです。

 中川加奈の関連記事でおもしろいものがあったので、転載します。
 キネマ旬報1969年3月上旬号(490号)P78~79より

   スターの話題
★松竹は、本年度に売り出す新スターたち20名を発表した。
 森田健作(本誌1月上旬号で紹介ずみ)、
 森次浩司(本名、24歳)、
 村山 健(村山仁、22歳、「恋の乙女川」でデビュー)、
 真家宏満(本名、22歳、元ジャニーズのリーダー)、
 河原崎建三(本名、25歳、河原崎長十郎の三男)、
 大野しげひさ(本名、29歳)、
 あおい輝彦(青井輝彦、21歳、元ジャニーズの一員。テレビで活躍中)、
 石山雄六(石山尹晴、28歳)、
 広川太一郎(広川次郎、28歳)、  *(しん)次郎=(言甚)で一字です
 岩下 亮(本名、23歳、岩下志麻実弟)、
 佐藤蛾次郎(佐藤忠和、22歳、関西喜劇出身)、
 大橋壮多(高橋洋一、20歳、関西喜劇出身)
 
 井上清子(本名、19歳)、
 小川ひろみ(小川喜久江、21歳)、
 中川加奈(仲川和子、18歳)、
 和田恵利子(本名、18歳)、
 珠めぐみ(栗山京子、18歳)、
 川口恵子(川口せつ子、19歳、「恋の乙女川」でデビュー)、
 山中広子(本名、18歳、43年度ミス・エールフランス)、
 富山真沙子(本名、22歳)、
 狩野邦枝(本名、20歳)、
 鈴木信子(本名、18歳、43年度凖ミス・エールフランス

 以上のようなものです。あきらかな誤植は、“20名を発表した”なのに、22名も並んでいること。それと、多分間違いなのは、石山雄六。これは石山雄大の誤植だと思う。石山雄大の本名が尹晴(まさはる)で合っているから。

男優で純粋に新人は、森田健作と村山健(この人は全く記憶にない)と岩下亮のみ。女優は新人ばかり。その中で80年発行の“日本映画俳優全集・女優編”に載っているのは、73年に結婚引退している小川ひろみだけ。目が大きく顔のつくりもハデだったから、短い間に強い印象を与えたのだ。

それに対して女優生活が長い中川加奈は『でっかいでっかい野郎』(69.4.26、野村芳太郎監督)で、デビュー。主役の渥美清とからむシーンも多く、新人としてはかなり幸運なスタートであった。私は、この作品を、封切の何年か後に見ているがほとんど忘れている。

そこで批評を読んでみたら、新事実を発見、また引用する。
キネマ旬報69年6月上旬号(No.497)P79~80に載っている林玉樹氏の批評から、

(前略)
 まずおかしいのは、最初に松次郎(渥美清)が思いをかけるのは、雇い主の医者の奥さん(岩下志麻)なのだが、この女は不得要領のうちに途中で消え(無法松のほんとのストーリーを教えられた松次郎が“バカらしいからやめた”ということになっているが)いつの間にか、老船長、伴淳三郎の孫娘(中川加奈)への献身に変わってしまう。
 構成としても明らかにバランスを失しているのだが、思うにこれは岩下を三日間しか使えないという制約に発したものだろう。加えて倍賞千恵子のやるはずの役を、まだふつうのせりふのいえない新人、中川でやらなければならなかったのだから、これは苦しい。孫娘がトランペット吹き(大野しげひさ)とかけ落ちするのを失恋の松次郎が狂言強盗みたいなことまでして助けてやり、彼にほれているパン助の姉御(香山美子)と泥酔しているラストには、おかしさはあっても悲しさがない。
 渥美清は実にうまくなったと思う。役者がうまくなった時に、そのシリーズが頽廃にさしかかっているのは、つらいことである。
 いまの日本映画の水準からいって、けっして悪い映画でも、ヘタな映画でもないが、このスタッフ、キャストとしては、くやしい不満が残った。

以上

 途中で岩下志麻が消えるという状況は、『GONIN2』(96.6.29、石井隆監督)の大竹しのぶと同じだ(大竹のスケジュールに合わせて内容を変えていったに違いない)。でも、3日間の撮影だけで、渥美と岩下の二枚看板で映画を作ってしまうパワーはすごい。斜陽と言われた60年代の映画界と言えども、今から思えばバラ色の天国だったのだ。

 倍賞千恵子の代役で中川加奈がデビューしたということは、初耳。『キネマの天地』(86.8.2)で、藤谷美和子の代役で有森也実が出演した状況に似ている(それぞれの理由はもちろん違うだろうが)。その後パッとしないのも(中川、有森には失礼だが)似ている。有森也実がスターになりそこなったのは、全て松竹の責任である。82年に『天城越え』の三村晴彦監督の売り出しに失敗して、その教訓も生かさず、また有森也実の売り出しに大失敗している。
 さて話がそれたが、中川加奈はその後、コツコツと脇役として出演し続けて、レオナルド熊と出会い二人の子ども(男と女)に恵まれ、幸せだったのではなかろうか。あるいは芸能界に復帰するかもしれない。その時は暖かく見守っていきたい。

 上記の22人の中で山田組に関った人(佐藤蛾次郎河原崎建三を除く)をあげる。
広川太一郎は『男はつらいよ』(69.8.27)で、さくらの見合い相手として出演。
富山真沙子は『家族』(70.10.24)で、井川比佐志(風見精一)の弟役前田吟(風見力)の妻(澄江)として出演している。

 最後に中川加奈の出演作をあげておきます。

69.4.26 でっかいでっかい野郎    野村芳太郎 渥美清伴淳三郎大野しげひさ
  7.5 ひばり・橋の  花と喧嘩   野村芳太郎 美空ひばり橋幸夫長門裕之
  7.23 喜劇 大激突        田中康義  なべおさみ園佳也子
  10.1 喜劇 女は度胸       森崎 東  倍賞美津子花沢徳衛渥美清
  10.15 太陽の野郎ども       井上梅次  目黒祐樹、松岡きっこ、香山美子
70.4.8 たぬき坊主(ぼんず)     渡辺祐介  フランキー堺伴淳三郎
  4.25 喜劇 度胸一番       井上梅次  財津一郎久里千春岡田茉莉子
  6.13 喜劇 男は愛嬌       森崎 東  渥美清倍賞美津子、寺尾聡
71.3.20 望  郷           大嶺俊順  三田佳子、森進一、榊原るみ
  9.15 人間標的          井上梅次  若林豪香山美子山崎努
  10.30 喜劇 花嫁戦争       斎藤耕一  和田アキ子原田大二郎
72.2.5 喜劇 女売り出します    森崎 東  森繁久彌市原悦子、夏純子
  10.28 旅の重さ          斎藤耕一  高橋洋子岸田今日子、横山リエ
73.5.2 愛ってなんだろ       広瀬 襄  天地真理田中邦衛森田健作
  9.15 花心中           斎藤耕一  近藤正臣中野良子津川雅彦
74.3.30 しあわせの一番星      山根成之  浅田美代子西城秀樹、篠ヒロコ
75.3.15 続 愛と誠         山根成之  早乙女愛、南条弘二、多岐川裕美
84.8.4 男はつらいよ
      ・夜霧にむせぶ寅次郎   山田洋次  渥美清秋野太作


 76~83年の間が抜けているのは、キネマ旬報の作品紹介に名前が載っていないからです。多分、何本か出ていると思うが、役柄が村上記代や秩父晴子、谷よしのと同じような端役になってしまったので、掲載を省略されてしまったのだろう。

 誤字・脱字など、お気付きでしたら遠慮なく指摘してください。書いている本人は、半永久的に間違いに気がつかないこともありますので。

1996.12.2 記

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