ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『キセキ あの日のソビト』(2017:兼重淳)









 『キセキ あの日のソビト』(2017:兼重淳)を池袋シネマ・ロサ2にて見る。1000円。
 音楽グループの成功話かと思いきや、家族愛のお話でした。
 父親の反対を振り切って、メタルバンド活動をしているジン。プロにスカウトされたものの、方向性の違いからバンドは空中分解。
 一方、親の期待に応えて一浪してやっと歯学部に合格する弟・ヒデ。大学に入って仲間とともにバンド活動を開始。その才能に惚れたジンがサポートに回り、CDデビューをプロデュースする。
 二人の父親に扮した小林薫が実にいい。医者の仕事に誇りをもってやさしく患者に接する反面、家庭では厳格な父親に徹している。音楽なんかで人は救えないという持論。そんな彼も、患者の結衣が手術をしてみようと心動かされたGReeeeNの曲を聴いて、息子たちに言う。「おまえたちもGReeeeNのような感動させる曲を作ってみろ」と。
 二人の母親・麻生祐未、これまたいいのだ。夫には従順だが、息子たちには愛情たっぷり。CDデビューでは子供のようにはしゃいで、CDショップに娘・早織とともに買いに行く。その従順な妻と天真爛漫な母親との切り替えが巧みである。
 弟のために合格祝いのすき焼き材料を買い込んでやってくる姉・早織のさりげないやさしさが実にいい。母親と一緒にCDショップで弟のCDを見つけた時のはしゃぎぶり。この母にしてこの娘あり、という感じがよく出ていた。
 父親には殴られっぱなしだったジン・松坂桃李だが、感情をぐっと内に抑え込んだ演技でこれまたいい。心では反抗しつつも、父親の前ではしっかりと正座して、「音楽の力で人を救うことを目指します」と宣言する折り目正しさに好感が持てる。
 弟・菅田将暉はもっと、折り目正しく、歯医者への勉強とバンド活動の両立に揺れ動く、繊細な心の表現を巧みに演じていて、すばらしい。
 大いにお薦めです。

2017年3月5日(日)鑑賞。
      キャスト
松坂 桃李     ジン
菅田 将暉     ヒデ(ジンの弟)
忽那 汐里     理香(レコードショップ店員)
平  祐奈     結衣(心臓病患者)
赤間麻里子     結衣の母
横浜 流星     ナビ(GReeeeNのメンバー)
成田  凌     クニ(GReeeeNのメンバー)
杉野 遥亮     ソウ(GReeeeNのメンバー)
早織        ふみ(ジン・ヒデの姉)
奥野 瑛太     トシオ(ジンのバンド仲間)
野間口 徹     売野(音楽プロデューサー)
麻生 祐未     森田珠美(ふみ・ジン・ヒデの母親)
小林  薫     森田誠一(ふみ・ジン・ヒデの父親)