ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『どろ犬』(東映東京1964:佐伯孚治)

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 『どろ犬』(東映東京1964:佐伯孚治)を、国立映画アーカイブ(旧名称:フィルムセンター)長瀬記念ホール OZUにて見る。6月29日から始まった「逝ける映画人を偲んで2017ー2018」特集の1本。310円。初見。


 監督の佐伯孚治(さえき たかはる)、美術の中村修一郎を偲んで、、、。

 ヤクザの幹部と持ちつ持たれつの熱血刑事が、悪事がバレて殺しを重ねていくお話。
 西村晃が強姦を示談にした会社経営者から強請り取った金10万円を、大木実に渡そうとすると、烈火のごとく怒り、血が出るまで叩きのめす。ここだけ見ると、西村が大木のうっかり漏らした情報から強請った犯行は初めてのように思える。
 しかし、その後のシーン、課長の清水元が「近頃、内部情報の漏洩から恐喝が頻発している」と語る。その後の流れから、大木は以前から西村に情報を漏らしておこぼれをもらっていたような関係。だったら、10万円を巡っての暴行は何だったんだ、、。
 あるいは、高跳びさせたはずの西村が、張り込み中のボーリング場に女に会いになぜ戻ってきたのか、、、。
 一事が万事、詰めが甘い。演出に力はあれど、りきみすぎて心がついていかない、という具合。
 大木実原知佐子にどれだけ惚れているのか、ヤクザと癒着してまでも犯罪を取り締まる情熱がどれだけあるのか、すべて曖昧模糊状態。見ている側としては、何をテーマにしたらいいのか、、、、。

 このデビュー作後は映画を撮れなかった佐伯孚治監督。東大の学生時代から日本共産党のバリバリの活動家で、監督デビューしてからも大川博社長の自宅に組合のデモ行進したりして、社長の逆鱗にふれる。会社は組合つぶしのため東映東京撮影所を分割して東映東京制作所を発足させ、佐伯孚治監督を始め組合員たちを移籍させる。何も仕事がない状態から、テレビの企画を立ち上げて売り込み、次第に仕事を増やしていったとのこと、、、。

 ともあれ、その後のテレビ映画を見ていないので、何とも言えないが、この『どろ犬』だけを見る限り、大きく伸びる可能性はなかったかな、、、。

 なお、最初のキャスティングは、
大沢課長=殿山泰司
富田  =室田日出男
となっていたらしい。
キネマ旬報に載った配役一覧が訂正されないまま、すべてのデータベースに転載され、今回の国立映画アーカイブのパンフにも反映されたようだ。
 これはほんの一例で、撮影前後の配役変更は日常茶飯事、それを訂正しないまま放置していると、今回のようなミスがまかり通るというもの、、、。

92分、35mm、白黒。


2019年8月22日(木)鑑賞

     スタッフ
監 督        佐伯 孚治
原 作        結城 昌治
脚 色        池田 一朗
企 画        大賀 義文
撮 影        飯村 雅彦
美 術        中村修一郎
音 楽        佐藤  勝
録 音        鳥巣  隆
照 明        桑名 史郎
編 集        長沢 嘉樹
スチル        丸川 忠士
助監督        降旗 康男



   キャスト
大木  実      菅井部長刑事
高城 裕二(新人)   安田刑事
神田  隆      松田署長
清水  元      大沢課長
高橋 昌也      森戸係長
織田 政雄      腰木刑事
井川比佐志      徳持刑事
大村 文武      瀬尾刑事
亀石征一郎      阿部刑事
西村  晃      山口(赤座組の代貸)
田中 邦衛      千葉(山口の頭の弱い舎弟)
  ?        富田(自家用車での強姦犯)
春日 俊二      川上(富田の弁護士)
不忍 郷子      小田切茂子(強姦された娘の母親)
  ?        小田切正夫(示談に応じた父親)
北原しげみ      小田切(強姦された娘)
原 知佐子      宮坂千代(服役中のヤクザの元女、今は菅井の女)
中山 昭二(?)    野見山収(テレビ俳優)
  ?        赤座の女
  ?        山口の女