『宮本から君へ』(スターサンズ=KADOKAWA2019:真利子哲也)を、角川シネマ有楽町にて見る。1200円。
ポスターや宣材を見ると、池松壮亮と蒼井優が満面の笑みで幸せいっぱいの表情。さぞや、明るく楽しい作品かなと期待して行った方は残念でした。
長編デビュー作『イエローキッド』(2010)、2作目『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)、ともに暴力を描いてきた真利子哲也監督、3作目ではついに犯罪行為が絡む暴力描写にエスカレートしてしまった。
今回、始末が悪いのが、ラグビーのスポーツ選手が犯罪を犯すということである。警察官が犯罪を犯す映画が数多くある状況では、スポーツマンが犯罪を犯しても何らおかしくはない。問題なのは、それを黙認しているラガーマンの父親、そしてそのラガーマン仲間の大人たち。
池松壮亮が前歯を3本もへし折られる重症を負っているのに、単なるケンカとして扱い、その手当もせず、彼を駐車場に放置して、傷を負わせた相手と和気あいあいとラグビーの練習試合をしている、なんてどういうこと。この描写はあきれてしまう。ラグビーワールドカップへの挑戦状なのだろうか、、、、。
出だしで、ギブスをつけて傷だらけの池松壮亮を見せ、こうなった訳は、と過去に戻って解き明かしてくれるやり方をいいけど、過去、現在、と普通にカットバックしていない。過去、現在、ちょっと前の過去、さっきの現在とは違う現在、という具合にかなり入り組んだ構成で、分かりにくい。
例えば、ある日の午後、池松壮亮がピエール瀧や佐藤二朗らと待ち合わせているところに蒼井優がやってくる。「遅い!ちゃんと謝ってみせろ」とピエール瀧がパワハラ。次の飲み会でもパワハラやセクハラのオンパレード。これは会社の先輩・蒼井優と後輩・池松壮亮が営業先のお客さんたちを接待しているのかと思っていた。ところが、佐藤二朗が「いい女を紹介するぞ」と一ノ瀬ワタルを呼び出して車で蒼井と池松をアパートに送らせる。アパートの中に入ったところで、やっとこのシーンは二人が恋人同士になった後の話かとわかる。
あるいは、蒼井の元カレ・井浦新から彼女が妊娠していると知らされると、会社を飛び出して駆け出す。かなり走ってとある会社へ。そこにいた蒼井優に結婚を申し込む。ここで初めて、蒼井と池松は同僚ではなく、違う会社の人だったことがわかる。では、どうやって知り合ったの?
とまあ、疑問だらけの作品で、暴力描写も含め、まるで共感できない作品だった。
9月27日鑑賞
スタッフ
監 督 真利子哲也
エグゼクティブプロデューサー 河村 光庸
〃 岡本 東郎
プロデューサー 佐藤 順子
ラインプロデューサー 角田 道明
原 作 新井 英樹
「宮本から君へ」(百万年書房/太田出版刊)
脚 本 真利子哲也
〃 港 岳彦
撮 影 四宮 秀俊
キャスティング おおずさわこ
音 楽 池永 正二
音楽プロデューサー 齋見 泰正
主題歌 宮本 浩次
「Do you remember?」
スタイリスト 伊賀 大介
ヘアメイク 小林 雄美
照 明 金子 康博
制作担当 金子賢太郎
装 飾 山田 智也
録 音 西條 博介
助監督 佐野 隆英
特 写 佐内 正史
キャスト
池松 壮亮 宮本浩
蒼井 優 中野靖子
井浦 新 風間裕二(靖子の元カレ)
一ノ瀬ワタル 真淵拓馬(ラガーマン)
柄本 時生 田島薫(浩の同僚)
星田 英利 小田三紀彦(浩の上司・課長)
古舘 寛治 岡崎部長(浩の上司)
ピエール瀧 真淵敬三(浩の営業先、ラガーマン)
佐藤 二朗 大野平八郎(馬淵のラガー仲間)
松山ケンイチ 神保和夫(浩の会社の先輩)
新井 英樹 宮本武夫(浩の父)
工藤 時子 宮本秀子(浩の母)
螢 雪次朗 中野靖邦(靖子の父)
梅沢 昌代 中野静江(靖子の母)
小野 花梨 中野瑞穂(靖子の妹)
? 浩・田島の同僚
? 靖子の同僚
? 馬淵のラガー仲間たち
? 神保の自宅での飲み会の女性たち