『あさぎり軍歌』(東宝映画1943：石田民三)を、国立映画アーカイブ2F 長瀬記念ホールOZUにて見る。６月24日(金)から始まった「東宝の90年 モダンと革新の映画史(1)」の１本。310円。
あさぎり軍歌(81分・16mm・白黒)
旗本の國武三兄弟、辰太郎(坂東)、勝輔(黒川)、眞三(隆野)それぞれの生き方を描いて時局批判も仄見える幕末維新もの。深川芸者(花井)と結婚して町人になり、弟・勝輔の参戦する上野戦争も傍観して武器開発に勤しむ辰太郎は、兵器増産推進を口実にした厭戦的人物のように見える。石田はこの映画で軍部にいじめられたことで映画界を離れたと後に語っている。
以上、国立映画アーカイブの解説より
1974年の石田民三特集で見逃していて、今回が初めて見る。
上野彰義隊の戦いをラストに据えて、新しい日本を作るんだ、というメッセージを嫌々入れたような作品。
冒頭の字幕タイトル「撃ちてし止まむ」が挿入されて本編が始まる。この標語は、1943年３月10日の陸軍記念日から大々的に使われるようになったらしい。映画界でもすべての映画に冒頭字幕タイトルを入れるようになったのもこの頃かな、、、。
時代背景は1868年２月。けれども、この映画が作られたのは1943年。勤王だ佐幕だ、と日本人同士が戦っている場合じゃない。一致団結して諸外国と戦う準備をすべきだ。そのためには性能が優れた武器の開発に尽きる。というのが主人公・国武辰太郎の主張であり、それはそのまま軍部の主義主張であったのだろう。
石田民三としては、女性陣の自立した生き様をもっと描きかった。でも、当時の他の作品に比べると、頑張って描ききっているかなと思う。
辰太郎の芸者あがりの妻・花井蘭子は、夫と喧嘩する時も対等だし、気っぷがよく堂々としてる。
三人兄弟を育て上げた旗本未亡人・三条利喜江は幕臣たちに息子のことで責められても、毅然と対応して息子の生きざまを信じる姿勢を変えない。
三男・真三の婚約者・万代峰子は父親に婚約破棄されても諦めず、一時は家出をしてまで添え遂げようとする。
これらの描写が、石田民三の精一杯の軍部への抵抗だったのかな、、、。
このあと、
1943.12.29『浪曲忠臣蔵』
1944.07.06『三尺左吾平』
1947.01.21『縁は異なもの』
３本を撮ったきりで、映画界を去り、京都の置屋の亭主稼業に専念。1901年６月生まれだから45歳での引退であった。
2022年７月３日(日)鑑賞
スタッフ
製 作 伊藤 基彦
演 出 石田 民三
脚 本 八住 利雄
〃 石田 民三
撮 影 山崎 一雄
照 明 岸田九一郎
美 術 島 康平
調 音 長谷部慶次
音 楽 伊藤 昇
演 奏 東宝映画管弦楽団
特殊技術 円谷 英二
録 音 山田 辰雄
現 像 西川 悦二
編 集 畑 房雄
製作主任 大岩 弘明
公開年月日：1943.04.29
上映時間：81分
製作会社：東宝映画
配給：(社)映画配給社・紅系
キャスト
坂東好太郎 国武辰太郎
黒川弥太郎 国武勝輔
隆野 唯勝 国武真三
三條利喜江 国武ひろ(母親)
西川 壽美 国武喜美(末娘)
花井 蘭子 お澄(辰太郎の妻)
霧立のぼる 絹枝(勝輔の妻)
菅井 一郎 末広権十郎(絹枝の父親)
万代 峯子 村松千恵(真三の許婚)
市川小文治 村松耕太夫(軍艦開陽丸副艦長、千恵の父親)
清水 将夫 徳川慶喜
清川 荘司 天野八郎(彰義隊隊長)
河野 秋武 丸茂(彰義隊)
芝田 新 島屋(彰義隊に壊れた鉄砲を売りつけた鉄砲商人)
若宮忠三郎 里山
尾上栄二郎 占者
花岡 菊子 千代菊(お澄の元芸者仲間)
滝 鈴子 たま代( 〃 )
井上 久栄 お軽( 〃 )
江藤 勇 小松原(真三の元同輩)
草間喜代四 青森( 〃 )
龍崎 一郎 矢田( 〃 )
渡 草二 米浦
片桐 六郎 重倉
国 創典 由造
大谷 友彦 義助
横山 運平 新門辰五郎
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