ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『花つみ日記』(1939:石田民三)






 『花つみ日記』(東宝京都1939:石田民三)を、国立映画アーカイブ2F 長瀬記念ホールOZUにて見る。6月24日(金)から始まった「東宝の90年 モダンと革新の映画史(1)」の1本。310円。

花つみ日記(72分・35mm・白黒)
 大阪の女学校を舞台にした友情物語。宗右衛門町のお茶屋の娘・栄子(高峰)と転校生みつる(清水)はすぐに親友になるが、先生(葦原)をめぐってささいなことで絶交し、栄子は女学校をやめ舞妓になる。当時高峰は何度も女学生を演じているが、そのなかでも本作は出色。劇中何度も歌われる主題歌に加え、讃美歌から純邦楽まで流れる音楽映画としても楽しい。戦前の大阪ロケも貴重である。
以上、国立映画アーカイブの解説より

 今回が2回目。女学生の友情、美しい先生へのあこがれ、それらを巧みに取り入れて展開するお話は素直に楽しめる。栄子の実家であるお茶屋さんの家、みつるのサラリーマン家庭の家、梶山芙蓉先生の実家でのいとはんぶりは、鮮やかな比較対照として、見事のひとこと。
 石田民三の奥さんがお茶屋を営んでいたということで、勝手知ったる世界をさりげなく描き切った腕前はアッパレ。
 栄子が憧れる中原淳一の絵が出てくる。葦原邦子の結婚引退公演が1939年の春、結婚したのが1940年11月である。映画では、すでに葦原邦子中原淳一の結婚が広く知れ渡っているという前提の楽屋落ち的くすぐりともいえる。
 マンドリン奏者の第一人者・鈴木静一が映画音楽を担当すようになったのが1936年。戦後は時代劇、特にマキノ雅弘監督とコンビを組むことが多かった。『次郎長三国志9部作』での茶摘み歌をベースにしたミュージカル調の音楽はほんとに楽しい。原点がこの『花つみ日記』の音楽だったのか。
 冒頭の校庭で女学生たちが長ほうきで掃除しながら歌う歌曲。俯瞰で撮ったり、ほうきのアップ、歌う彼女たち、行進風の振り付け、完全にミュージカルである。その後も葦原邦子がピアノを弾きながら歌う歌曲、それに合唱する女学生たち。登山ケーブル車中で高峰秀子が歌う、それにカットバックしながらハイキングの清水美佐子が輪唱する。ほんとうに素敵なシーンの連続であった。
 脚本の清水紀子は、1933年から日活太秦で活躍しているようで、その後日活多摩川東宝映画と移籍して、1941年を最後に記録がない。多分、女性だと思うが、女性脚本家の先駆けかなと推察される。
 なお、女学生4人組・東静江に扮した御舟京子は、加藤治子として戦後に大活躍。この『花つみ日記』が映画デビュー作。1枚目のスチール写真、メガネをかけた林喜美子の左隣の子らしい。
2022年7月9日(土)鑑賞

     スタッフ
演 出      石田 民三
脚 色      鈴木 紀子
原 作      吉屋 信子
製 作      青柳 信雄
撮 影      山崎 一雄
照 明      丸川 武郎
音 楽      鈴木 静一
装 置      河東 安英
録 音      俣野 八男
編 集      畑  房雄
製作主任     市川  崑
製作主任     毛利 正樹
主題歌:ビクターレコード
    「秋の歌」 作詞・吉屋信子/作曲・鈴木静一
    「秋空の歌」作詞・佐藤惣之助/作曲・鈴木静一
公開年月日:1939.10.31
上映時間:8巻・73分
製作会社:東宝京都撮影所
配給:東宝映画

     キャスト
高峰 秀子    篠原栄子
清水美佐子    佐田みつる
林 喜美子    吉野和子
御舟 京子    東静江
松岡 綾子    岡部とし子
三邦 映子    太田勝美
葦原 邦子    梶山芙蓉
伊達 里子    栄子の母
三條利喜江    みつるの母
香川 澄子    女中さん(みつるの家)
美澤由紀子    信者の女
成瀬富士子    芸妓文龍
石井千恵子    芸妓勝三
衣川 恵美    芸妓
伊井 吟子    仲居
進藤英太郎    栄子の父
大倉 文雄    みつるの父
山田 好良    牧師さん(日曜教会)
三田  進    みつるの兄
島津 勝次    源さん(お茶屋)
花沢 徳衛    丁稚清どん(芙蓉先生の実家)
山島 秀二    お医者さん
井上 忠美    先生
松田  新    番頭


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