『白薔薇は咲けど』(P.C.L.1937:伏水修)を、国立映画アーカイブ(NFAJ)・小ホールにて見る。10月4日より始まった「東宝の90年 モダンと革新の映画史(2)」の1本。初見。
『白薔薇は咲けど』(77分・35mm・白黒)
P.C.L.入江ユニット製作による音楽映画。銀座の洋品店のお針子・篤子(入江たか子)は恋愛や結婚に強い憧れを持っている。ひとりぼっちの休日、たまたま立ち寄った遊園地で、ある男性(佐伯秀男)と出会うが…。自室で入江が一人夜食をとる場面など三浦光男(→光雄)の撮影が素晴らしい。監督の伏水修は1930年代のモダンなP.C.L.=東宝作品を支えた。
以上、NFAJの解説より。
これまたおもしろい。土曜日の朝から始まって月曜日までの3日間のお針子の仕事と恋のお話。
アパート(月光荘)の屋根裏部屋に住む篤子の出勤風景から始まる。いつものように花屋に寄り、一輪の薔薇を買う。勤務先はファッションストア・マヤの衣装部のお針子(ミシン踏み)部屋。ここは別館になっていて大通り沿いに本館。ロケ先は三越の日本橋本店。クライマックスのファッションショーが行われる吹き抜けの大階段があるホールは、今でも三越日本橋店に現存する。
お針子たちの生態がいきいきと描かれていて、すばらしい。何やら『制服の処女』を思い起こさせるヨーロッパ調の香りが充満している。
監督の伏水修<ふしみず しゅう>は1910年12月生まれで、山中貞雄(1909年11月生まれ)や黒澤明(1910年3月生まれ)の1学年下。でもP.C.L.入りは1934年2月。1936年1月『あきれた連中』(岡田敬との共同監督)で監督デビューし、4月『歌う彌次喜多』(岡田敬との共同監督)を経て、8月『唄の世の中』で1本立ち。そして12月の4作目にして傑作『東京ラプソディー』をものにしている。山中貞雄は1936年に『人情紙風船』を撮って1939年に29歳で亡くなっている。黒澤明は伏水修が監督デビューした年に入社している。
伏水修は14本監督した後の1942年7月9日に肺結核で亡くなっている。31歳の若さ、ほんとうに惜しい。遺作『青春の気流』が今回上映されるので楽しみ、、、。
つかの間の恋の相手・佐伯秀男があまりぱっとしない。婚約者がいるという役柄のせいもあるが、監督が男優にはあまり興味がないということか。もっぱら女性たちをいかに輝かせるかということに全精力を傾けていたのだろう。
その証拠に、いつもはでっぷりと太った役柄の清川玉枝。めずらしく洋装で、スラリと痩せていてスタイル抜群。入江たか子と優るとも劣らないほど。お針子たちを総括する監督者の役柄で、厳しくもあり、遅刻してきたお針子のフォローもする優しさも兼ね備えた、まさにできる理想の上司だった。これも、伏水修の演出のたまものだと確信する。
絶世の美女時代は日活時代の作品群に任せるとして、この作品もなかなかどうして、美しくもあり、多摩川園で一人遊ぶ姿は光り輝いていた。満足、満足、満足。
2022年10月8日(土)鑑賞
スタッフ
原 作 西條 八十
演 出 伏水 修
脚 色 東坊城恭長
製 作 野坂 実
撮 影 三浦 光雄
音 楽 古賀 政男
録 音 片岡 造
編 集 岩下 広一
装 置 山崎醇之輔
台 詞 田中千禾夫
衣裳考案 田中 千代
独 唱 奥田 良三
〃 奥田 英子
録音・現像:写真化学研究所
演奏:P.C.L.管絃樂團
衣裳調製:鐘紡東京サービスステーション
ホールパイプオルガン:三越呉服店提供
シンガーミシン会社製品使用
公開年月日:1937.07.11
白黒/スタンダード
上映時間:77分
製作:P・C・L映画製作所
配給:東宝映画配給
P・C・L/入江ユニット作品
キャスト
入江たか子 篤子
佐伯 秀男 淳介
澤 蘭子 珠子
江戸川蘭子 静子(淳介の婚約者)
御橋 公 橋本(衣装部の部長)
清川 玉枝 秋田(衣装部お針子たちの上司)
三好 久子 山本(衣装のお客様係)
北村季佐江 林宏子(遅刻してきたお針子)
牧 マリ 鈴木
梅園 龍子 K子(ファッションショーでダンス披露)
奥田 良三
奥田 英子 ダンスホールで男装にて歌う
水上 怜子 お針子
宮野 照子 ぎんこ(ファッションストア・マヤ1Fの売り子)
英 百合子 花屋
清水美佐子 花屋の娘
椿 澄枝
三條利喜江 月光荘の管理人
北沢 彪 珠子の恋人
柳谷 寛 淳介の会社同僚
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