ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『一命』(2011:三池崇史)




 『一命』(2011:三池崇史)をユナイテッド・シネマ豊洲スクリーン7にて見る。1300円(鑑賞券)、パンフレット800円。
 見終わったあと、無性に『切腹』(松竹京都1962:小林正樹)を見たくなった。
 今回の再映画化の売りは3Dということで、全編3Dカメラで撮影したとのこと。しかし2Dで見ると、武家屋敷の奥は柱との境目がはっきりしない真っ黒くろすけ、遠景の人物の顔はぼやけて判然としない。最近はデジタル撮影が主流になってきて、手前ははっきりくっきり見えるが、遠景はぼけまくるという作品が多く見受けられる。やはりフィルム撮影には明暗の鮮明度という点においてもまだまだ遅れをとっているというこであろう。
 もう一つは、脚本が女性の山岸きくみ(1960年生まれ)である、ということである。美穂(満島ひかり)と千々岩求女(瑛太)との夫婦愛、赤ん坊・金吾との親子愛などをきめ細かに描き切っている。さらに津雲半四郎(市川海老蔵)と美穂、求女、金吾との家族愛、千々岩甚内(中村梅雀)との交流を含め、丁寧に盛り込んでいて、充分に涙を誘い感動的である。
 しかし、ここまでである。
 音楽は世界的となった坂本龍一(1952年生まれ)ではあるが、控えめな旋律で物足りない。映像と挑戦的に格闘していた武満徹(1930年生まれ)がなつかしい。
 撮影は北信康(1960年生まれ)、3Dでしか評価できない2Dのぼけた黒味部分はいただけない。片や宮島義勇(1909年生まれ)、撮影界の天皇である。「西の宮川一夫、東の宮島義勇」と評する人もいるが、宮川は監督を立てるが、宮島は時には監督を押しのけて前にも出たりする。今でいえば木村大作(1939年生まれ)であるが、宮島ほどではない。天皇・宮島に比べられる北信康にとっては酷というものかもしれない。
 脚本は、山岸きくみに対して、回想形式の第一人者・橋本忍(1918年生まれ)である。これまた比較すべきは失礼というもの。
 監督は三池崇史(1960年生まれ)に対して、小林正樹(1916年生まれ)である。次から次へと作品を作り続ける三池崇史と、黒澤明以上の完璧主義者である小林正樹とでは作品への取り組み方が自ずから違ってくるのはいたしかないことか。
 津雲半四郎に市川海老蔵(1977.12.06~)、片や仲代達矢(1932.12.13~)、撮影当時は市川海老蔵32~33歳に対し仲代達矢29歳。
 千々岩求女に瑛太(1982.12.13~)、片や石濱朗(1935.01.29~)、撮影時は瑛太27~28歳に対し石濱朗27歳。
 美穂に満島ひかり(1985.11.30~)、片や美保に岩下志麻(1941.01.03~)、撮影時は満島ひかり24~25歳に対し岩下志麻21歳。
 斎藤勘解由に役所広司(1956.01.01~)、片や三國連太郎(1923.01.20~)、撮影時は役所広司54~55歳に対し三國連太郎39歳。
 スタッフは、
三池崇史 50歳、小林正樹46歳、
山岸きくみ50歳、橋本忍 44歳、
北 信康 50歳、宮島義勇53歳
坂本龍一 58歳、武満 徹32歳、
という、比較年齢である。最近の高齢社会を考えれば妥当な年齢ということである。
 役者陣は概ね『切腹』に対して負けじとそれぞれ好演していた。
 ただ、最後にもう一点。沢瀉彦九郎に扮した青木崇高との対決シーンが見たかった。三人まとめてというのでは、あまりにも相手が弱すぎである。ひとりひとりと対決してこそ、見る側のカタルシスも満足できようというものである。

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