『almost people』(2023：横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄)

以上、『almost people』(2023：横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄)より

　『almost people』(2023：横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄)を、ユーロスペース・シアター２にて見る。1200円。
　４人の男女がレストランで食事を頼むところから始まる。シーンが変わり、男性が街の人々の声を拾っていくお話に入っていく。次のお話は、女性が会社を辞めて、開発したアプリでブラック企業を糾弾していくお話。さらに、一見幸せそうな同棲している恋人たちのお話。ラストが高校中退して海沿いの旅館で働いている女子とそこにやって来た担任教師のお話。ここまで見てきて、この登場人物たちの関連性は？
　と、不思議な気分で見ていたら、ラスト、冒頭のレストランシーンに戻って、やっと４人兄妹のお話かと納得。
　長男は「喜び」がない。長女は「怒り」がない。次男は「楽しさ」がわからない。次女は「寂しさ」という感情がない。それぞれの葛藤を抱えながら、生きていく。解決の兆しがあったりなかったり、さらに次のステージに進んだり。
　終わってみたら、なかなか味わいのある作品。
　長男・嶺豪一の飄々とした演技は、横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』(2009)・『俳優亀岡拓次』(2016)・『いとみち』(2021)のテイストが感じられる。
　長女・柳英里紗の過激さは、石井岳龍監督の『狂い咲きサンダーロード』(1980)・『爆裂都市　バースト・シティ』(1982)・『逆噴射家族』(1984)・『五条霊戦記　GOJOE』(2000)・『パンク侍、斬られて候』(2018)などの狂気がにじみ出ている。
　次男・井之脇海の無表情は、加藤拓人監督の『DIVOC‐12「睡眠倶楽部のすすめ」』(2021)の前田敦子の無表情さに相通じるものがある。
　次女・白田迪巴耶<しらた　みはや>は、守屋文雄監督の監督作品は見ていないが、彼の出演作品『銀平町シネマブルース』(2023：城定秀夫)などの作品群から推察すると、コミカル的要素がでているな、と思う。
　兄妹以外で印象に残ったのは、木竜麻生。今までは、どんよりと暗い役柄が多かったけれど、今作のあんなに表情豊かな笑顔は今まで見たことなかった。
2023年10月29日(日)鑑賞

　　　　　　　スタッフ
監　督　　　　　　　　横浜　聡子
　〃　　　　　　　　　石井　岳龍
　〃　　　　　　　　　加藤　拓人
　〃　　　　　　　　　守屋　文雄
脚　本　　　　　　　　いながききよたか
　〃　　　　　　　　　加藤　拓人
　〃　　　　　　　　　守屋　文雄
プロデューサー　　　　関　　友彦
撮　影　　　　　　　　石垣　　求
照　明　　　　　　　　後閑　健太
美　術　　　　　　　　布部　雅人
音　楽　　　　　　　　菊地　成孔
　〃　　　　　　　　　新音楽制作工房
録　音　　　　　　　　川本　七平
スタイリスト　　　　　田口　　慧
ヘアメイク　　　　　　河本　花葉
編　集　　　　　　　　長瀬　万里
助監督　　　　　　　　萬代　健士
ラインプロデューサー　山田　真史
公開年月日：2023.09.30
上映時間：140分
カラー／ビスタ／DCP
製作会社：コギトワークス
企画：コギトワークス
配給：コギトワークス

　　　　　　　キャスト
嶺　　豪一　　　　　　神尾光(長男)
柳　英里紗　　　　　　神尾火水子(長女)
井之脇　海　　　　　　神尾太陽(次男)
白田迪巴耶　　　　　　神尾花子(次女)
宇野　祥平　　　　　　大和屋時男(俳優、光の友人・大和屋時男)
平井　亜門　　　　　　藤城(映画監督)
瑚海みどり　　　　　　古見(映画プロデューサー)
木引　優子　　　　　　我孫子由紀(俳優、時男の相手役)
渋川　清彦　　　　　　火水子の元上司・島郷
諫早　幸作　　　　　　革命集団「レボル」星
木村　文哉　　　　　　革命集団「レボル」量
塩塚モエカ　　　　　　虹(多様性の討論会グループ)
伊澤　彩織　　　　　　華(多様性の討論会グループ)
木竜　麻生　　　　　　荒井エミ(保育士、太陽の恋人)
松浦　祐也　　　　　　模型店店主・アキオ
橋野　純平　　　　　　カフェのマスター
岩谷　健司　　　　　　花子の担任・藤巻(マッキー)
水澤　紳吾　　　　　　花子が働く旅館の番頭
後藤ユウミ　　　　　　旅館で働く人
邦城　龍明　　　　　　神尾利彦(神尾４兄妹の父親)