ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『月は上りぬ』(日活1955:田中絹代)

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 奈良に疎開し、そのまま半隠居生活に入った笠智衆の三姉妹のお話。
 まず最初は、次女・杉葉子三島耕の恋愛。お互い好きなのに煮え切らない。そんな二人を見かねて、三女・北原三枝安井昌二が恋のキューピットになって世話を焼く。ここらへんのやり取りがおもしろい。ユーモアたっぷりで中年女中に扮した田中絹代を巧みに操り、監督・田中絹代はなかなかの喜劇的センス。
 さて、杉葉子三島耕を結ばせた後は自分たちの番、と思いつつもなかなかうまくいかない北原と安井。このへんの描き方はしっとりと情緒たっぷり。緩急を心得たうまい演出。
 最後は、当然のごとく結ばれる二人。残ったのは、未亡人である長女の山根寿子。笠智衆の勧めもあり、意中の人・佐野周二と結婚しようかな、というところで終わる。
 この作品で気づいたのだが、山根寿子って田中絹代に似ているな、と。顔がたちといい雰囲気といい、田中絹代の分身かなと。