ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『異国の丘』(渡辺プロ=新東宝1949:渡邊邦男)

 フィルムセンター・大ホールにて『異国の丘』(渡辺プロ=新東宝1949:渡邊邦男)を見る。
 シベリアに抑留されている夫・上原謙の帰りをひたすら待つ花井蘭子。これほど夫婦愛を高らかに歌い上げた作品が当時あっただろうか。
 新婚旅行の伊豆の浜辺での二人の抱擁ぶり。演出は照れもせず、堂々と押し通す。それは二人の愛情表現だけではなく、なぜ夫は帰ってこないのだ、という強烈な主張が、これがクライマックスかと思われるほどの飯田信夫の音楽に後押しされて、要所要所で盛り上げて涙を誘ってくれる。そして、ハッピーエンドの大団円。これできっちり90分に収める渡邊邦男の職人技、さすがである。彼の思想は私とは相反するものだが、その職人芸は大いに評価したい。