ラピュタ阿佐ヶ谷にて、『へそくり社員とワンマン社長・へそくり社員敢闘す』(東宝1957:小田基義)を見る。
東京駅前の立派なビル街とは対照的な裏通りのチャチなビルにある三流商社・渡辺交易に勤める経理課長・吉村に扮しているのが三木のり平。そのワンマン社長が柳家金語楼。この二人だけで映画が成立してしまう強烈なキャラクター。
営業課長に森川信、経理課員に小泉博、北川町子、舟橋元、中田康子。小泉と北川、舟橋と中田が恋人同士。そこへ取引先で親会社的存在の社長・藤原釜足の放蕩息子・平田昭彦が入社して来て、中田康子を狙ったりする。
渡辺交易は薬の商社のようで、怪しいブローカーの「酒が嫌いになる薬」の売り込みに飛びつく。実験台に指名されたのが、恐妻家で部下に一度もおごったことがないくらいケチ、けれど酒が大好きな三木のり平。宴席で薬の実験成果を披露する奮闘ぶりは、抱腹絶倒もの。
ラストは、小泉と舟橋が酔っ払ったのり平を介抱しながら自宅に送り届けると、出てきたのは恐妻ならぬ可愛い小学生の娘、5年前に妻が死に、以来幼い娘が妻の代わりを勤めているというオチ。
いま公開している『ホリディ』(2006:ナンシー・メイヤーズ)にも似たオチがある。ジュード・ロウが頻繁に携帯で会話する女性の存在、しかも二人も。なんてプレイボーイなんだと、憤るキャメロン・ディアス。でも、ジュード・ロウの自宅を訪ねたキャメロンを迎えてくれたのは、携帯の相手である可愛い娘たちだったというわけ。
古今東西、人間の考えることは、似たり寄ったり、古いように見えても、味付け次第で充分通用するのだ。