ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『海を感じる時』(2014:安藤尋)




 『海を感じる時』(2014:安藤尋)をテアトル新宿にて見る。1000円(火曜日の会員デー)、パンフレット720円、ポスター520円。
 祝日で会員デーということもあり、かなり混雑していた。中沢けいの原作に魅かれたのか池松壮亮人気なのか、女性客が多い。
 主人公・恵美子に扮した市川由衣はオールヌードになって、むくわれない愛に突き進む痛さをよく体現していた。童顔でほんとに華奢な身体から痛々しさがあふれかえっていた。ただ、「君が好きなわけではない。女の人の体に興味があったんだ」という相手に対して、何ゆえに自ら身体の関係を重ね、追い求めるか、という心理描写がよくわからない。
 相手の男・洋に扮した池松壮亮は相変わらずうまい。こんなグダグダした男を演じさせたら天下一品。ずるい男ではあるけど、やさしさも兼ね備え、そこらへんの絶妙なバランス感をみごとに演じきっている。
 この二人の演技だけ見せられてはしんどいなあ、と思っていた頃に登場する母親・中村久美によって、作品が動き出す。母と娘のバトルが、おもしろい。今まで穏やかな母親が多かった中村久美は、こんな演技もできるんだ、という驚き。助演女優賞ものである。
 全面的に共感できる作品ではないが、市川由衣池松壮亮、中村久美、三人の演技は必見です。