ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『おかえり』(1996:篠崎誠)



 『おかえり』(1996:篠崎誠)を、国立映画アーカイブにて見る。「1990年代日本映画 躍動する個の時代」の1本。再見か再々見。420円。
 公開時に篠崎誠監督をシネマディクトの例会にお招きして、お話を聞いたことがある。その頃とあまり変わらない細身の体形で、上映前に舞台下で皆さんにご挨拶。今回の特集ではいろんな監督が挨拶したが、篠崎誠監督がダントツに長かった。さながら、ミニトークショーのような感じ。
 まず、本日上映の3本についての関係性について。
「『ワンダフルライフ』(1999:是枝裕和)には、ARATAとやりとりがある映写技師だった役柄として出演。でも、同業者のよしみでカットされるとしたら下手な演技の自分の出演シーンかなと思っていたら、案の定すべてカット。それでもキャストクレジットには残してくれて、逆に見た知人たちからは、どこに出ていたの?と質問攻めに」
「『CURE』(1997:黒沢清)では、心理学的な資料の下調べをしたりして、それを監督に提供した。こちらの調べた内容が、監督の予想していた結果と違って満足しなかったようだが、完成した映画にはその資料にのっとった内容になっていて、協力した甲斐があったと、一安心」
「本題の『おかえり』。中学生から大学の時まで8ミリは撮っていたけど、初めての35ミリの商業映画。最初から商業映画として作る環境も心構えもなかったので、自主製作という形でスタート。映画を完成するにあたっては、たくさんの人々の協力があったおかげ。そのなかでも、代表して3人の方々に感謝したい」
「撮影の古谷伸<ふるや おさむ>さん。加藤泰作品の名カメラマン。なんとしてもカメラをお願いしたくて、京都まで行って、酒を酌み交わしながら、口説き落とした。時代劇なら撮れるけど、このホンをどうやって撮ればいいのかな、、、と言いながら承諾してくれた」
 その話を聞いた後で、じっくり見ると、最初から最後まで、ローアングルのオンパレード、さすが古谷伸!
「次に青木富夫さん。戦前は松竹蒲田でサイレント時代から突貫小僧として活躍。応召され戦地を生きのびて、松竹に復帰。日活へは鈴木清順監督らと移籍。石原裕次郎組と小林旭組、どちらにも可愛がられて、出演手当を稼ぐためと早く帰るために、できるだけセリフは削ってもらっていた。この『おかえり』のセリフは、今まで出演した作品のセリフを合わせても到底及ばないくらいの長台詞。それを難なくこなしてくれて感謝しかない」
 公園で孫の女の子と一緒にベンチに座り、上村美穂に一方的にしゃべりかける明るい老人。ほぼワンカットでの膨大な長セリフをよどみなくしゃべりまくるその演技は圧巻そのもの。合間には孫と上村美穂とのやり取りもあって、さすが突貫小僧の巧みさはさび付いていない、と改めて感心した。
「最後に、立教大学時代からの盟友・青山真治。クランクイン前は、助監督について現場を仕切ってくれる予定だったが、黒沢清監督の現場に駆り出され、こちらにはこれなくなった。そうこうしているうちに寺島進にこの作品のテーマを一言で語ると何ですか?と聞かれた。そんな重要なことが一言で語れるようだった映画は撮らない、とはぐらかしてしまった。こんなこともあって、暗礁に乗り上げていた時期に、青山から1本の電話。有名な監督が言っていたけど、スタッフ・キャストの質問には真摯に正面から向き合うべきだ。この一言を聞いて、翌日に二人のプロデューサーと話し合いをもち、1週間後にクランクインできた。あの青山真治の助言がなかったら、今の自分はここに立っていない。この場を借りてお礼を言いたい。青山ありがとう」

 以上、「」の中身は、メモも取らずに、私の記憶のみで書いたもの。言い回しなどはすべて自己解釈。もし記憶違い、間違いなどあったらご指摘ください。
(2022年4月30日鑑賞)

        スタッフ
監 督     篠崎  誠
製 作     筒井 武文
 〃      松田 広子
脚 本     篠崎  誠
 〃      山村  玲
撮 影     古谷  伸
 〃      鈴木 一博
音 楽     ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
編 集     筒井 武文
録 音     栗林 豊彦
整 音     本間喜美雄
助監督     杉山 太郎
 〃      遠藤万吏子
照 明     鈴木 一博
スチール    川村 悦生
制作:コムテッグ
配給:ビターズ・エンド

        キャスト
寺島  進    北沢孝
上村 美穂    北沢百合子
小松 正一    佐久間(孝が勤める学習塾の同僚)
高橋 紳吾    精神科医
諏訪 太朗    刑事
青木 富夫    公園の老人
堀江あやか    公園の老人の孫
小沢 仁志    公園の家族
小沢ジーナ    公園の家族
小沢珠里麻    公園の家族
鈴木 澄男    青果店の人
鈴木ケイ子    青果店の人
斉藤 正義    居酒屋の主人
遠間 亮平    居酒屋の客
羽場 篤嗣    インターン
熊崎 洋子    インターン
知念 良尚    塾長



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