ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『残菊物語』(松竹京都1939:溝口健二)




以上、『残菊物語』(松竹京都1939:溝口健二)より


 『残菊物語』(松竹京都1939:溝口健二)を、国立映画アーカイブ(NFAJ)長瀬記念ホール OZUにて見る。「返還映画コレクション(1)第一次・劇映画篇 Repatriated Film Collection [Part 1] : Fiction Films, 1930~1945」特集の1本。310円。
殘菊物語(143分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
1939(松竹京都)(監)溝口健二(原)村松梢風(脚)依田義賢(撮)三木滋人、藤洋三(美)水谷浩(音)深井史郎(出)花柳章太郎、森赫子、高田浩吉、川浪良太郎、高松錦之助伏見信子、河原﨑權十郎、梅村蓉子
 自らの芸に慢心した二代目尾上菊之助(花柳)と、歌舞伎役者として立ち直らせようと献身的に支え続けるお徳(森)の悲恋を描く。新派で舞台化され評判になった村松梢風の同名実録小説を依田義賢が脚色。フィルムの現存しない『浪花女』(1940)や『芸道一代男』(1941)と合わせて「芸道3部作」と呼ばれ、長廻しの撮影も完成度を極めている。第一次返還映画の中で最初に単独上映された、「返還映画」を象徴する作品である。
(以上、国立映画アーカイブの解説より)

 再々々々見。
 最初に見たのは、1973年のフィルムセンター「溝口健二特集」にて。その年に見たベストテンのひとつに選んだ短評で「あの驚くべきカメラワーク!これぞわが生涯のベスト2であると涙を流しながら決めました」。
 お徳の真正面から撮ったクローズアップが中盤以降にやっと出てくる。そもそも初登場シーンが菊之助の弟である乳飲み子を子守してしているところで、それを堀川の下から仰角のフルショットの長回し。懇々と演技について語るお徳のアップはまるでなし。観客には、どんな顔だかよくわからない。
 あるいは、暇を出されたお徳の実家を探す菊之助。下町の長屋を歩き回る彼を、カメラは長屋の奥から横移動でとらえる。つまり家屋の奥まで戸を取っ払って吹き抜けにして、通りを探し歩く菊之助を撮っているのだ。
 似たようなシーンは、後半にもある。名古屋駅で東京に凱旋する一行。列車にお徳が乗っていないことに気づく菊之助、プラットフォームから車両ごとに探し回る菊之助。その姿を車両の線路側からとらえる。つまり車両の線路側をすべて取り払っていて、車両の乗客越しに撮っている。ワンシーンワンカットを徹底させるために、なんでもやってしまう溝口健二の演出ぶりには恐れ入り谷の鬼子母神であった。ちなみにお徳の実家は入谷で、鬼子母神菊之助とお徳が逢引きするところ。
2023年11月28日(火)鑑賞


       スタッフ
監 督        溝口 健二
構 成        川口松太郎
脚 色        依田 義賢
原 作        村松 梢風
撮 影        三木 滋人
 〃         藤  洋三
美術監督       水谷  浩
装 置        清水 太一
 〃         六郷  俊
装 飾        菊川常太郎
 〃         荒川  大
音 楽        深井 史郎
録 音        志木田隆一
配 光        中島末二郎
編 集        河東 與志
技 装        山口 清三
衣 裳        奥村喜三郎
技 髪        井上 力三
 〃         高木石太郎
結 髪        木村ヨシ子
進 行        西  七郎
総監督        白井信太郎
監督助手       坂根田鶴子
 〃         田原 正三
 〃         花岡多一郎
普通写真       遠藤 勝利
舞踊振付       音羽 菊蔵
字 幕        望月  淳
美術考証       木村 荘八
 〃         食満 南北
時代考証       寺門 静吉
撮影助手       田島 松雄
 〃         藤原  進
 〃         清水 保一
 〃         竹下 祐司
録音助手       杉本 文造
長唄         坂田 仙八
三味線        杵屋勝寿郎
鳴物         望月太明蔵
常盤津        常盤津文系
浄瑠璃        豊沢猿二郎
浄瑠璃        富沢猿二郎
公開年月日:1939.10.10
上映時間:(15巻)146分
モノクロ/スタンダード/35mm
製作会社:松竹(京都撮影所)
配給:松竹

       キャスト
花柳章太郎      尾上菊之助
森  赫子      お徳
高田 浩吉      中村福助
高松錦之助      尾上松助
葉山純之輔      守田勘弥
河原崎権十郎     五代目菊五郎
梅村 蓉子      五代目の夫人・里
尾上多見太郎     尾上多見蔵(大阪の引き立て)
川浪良太郎      栄寿太夫(大阪)
志賀廼家弁慶     按摩・元俊(大阪で菊之助が間借りしている)
最上 米子      おつる(元俊の娘)
南  光明      新富座の頭取
天野 刃一      新富座女形
井上 晴夫      奥役
結城 一朗      待合の客
富本 民平      待合の客
柳戸はる子      待合の女将
伏見 信子      芸妓・栄龍
花岡 菊子      芸妓・小仲
白河富士子      芸妓・小菊
鏡  淳子      五代目の女中
大和 久乃      五代目の女中
田川 晴子      五代目の乳母
柴田 篤子      芸妓一
秋元冨美子      芸妓二
国春美津枝      芸妓三
中川 芳江      茶店の婆(鬼子母神)
西  久代      お徳の叔母
中川 秀夫      お徳の叔父
石原須磨男      旅廻り太夫
広田  昴      旅廻り頭取
保瀬英二郎      旅廻りの役者
花田  博      旅廻りの役者
松下  誠      猿廻しの男
白妙 公子      女角力
花柳 喜章      尾上多見二郎
島   章      角座頭取
春本 喜好      実川猿三郎
橘  一嘉      菊之助の弟子
磯野 秋雄      若い者
嵐 徳三郎      中村芝翫

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