ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『その口紅が憎い』(松竹1965:長谷和夫)

 ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー『その口紅が憎い』(松竹1965:長谷和夫)を見る。
 主演は三流業界紙社長・内田良平。偽ドル事件に興味を持った彼は、航空会社のソリスター・桑野みゆきに近づく。ソリスターという職種を初めて知った。海外旅行が制限されていた頃の職種かな。偽ドル、闇ドルも海外へ持ち出せるドルが制限されていたために起きた事件かも。
 桑野みゆき内田良平を抱き込んで、組織の偽ドル30万ドル(1億2千万円)を横取りしようと企む。まんまと成功したかに見えた土壇場で、内田が良心の呵責に苛まれ(彼の妹が偽ドルの嫌疑をかけられて自殺したという過去があり)、警察に通報する。みゆきは組織の殺し屋・園井啓介に羽田空港で射殺されてしまう。
 桑野みゆきは悪女に挑戦したのだろうが、徹し切れていない。たたずまいはさまになっているが、しゃべりだすとどうもいけない。あの子供っぽい声では、やさしい女になってしまう。内田に惚れつつも、計画を成功させる非情さ、という二面性を演じなければいけないはずなのに。
 彼女自身も自分の資質を充分に認識していたのだろう。後輩の岩下志麻倍賞千恵子に追い越されて、自分の居場所がなくなったこともあり、結婚引退という道を選んだのかな。