シネマヴェーラ渋谷にて『結婚の夜』(東宝1959:筧正典)を観る。
安西郷子には何か裏がある。そのうち、あっという事実が明かされるぞ、とワクワクしながら見ていた。けれど、なんのことはない。普通に結婚を夢見る処女だった。
しかし、そこまで期待を持たせる演出はさすがである。『重役の椅子』(東宝1958:筧正典)を撮っただけのことはある、確かな演出である。
アルバイトの巫女として、新郎の小泉博に三三九度の酌をする安西郷子のなんと恐ろしいほど冷静なことか!ここで何か起きるかと期待を持たせておいで、何も起きない。
なあんだ、とがっかりさせておいて、次からの怒涛のような展開。列車での出来事、さらにはホテルの出来事。あっと驚く幕切れを誰が予想し得たであろうか。
製作公開後半世紀の年月を経てやっと、傑作の認知を受けた『結婚の夜』に拍手、拍手。筧正典、あんたはやはりただ者ではない!