フィルムセンターにて『不沈艦撃沈』(松竹1944：マキノ正博)を見る。500円。
海軍から魚雷の200％増産を命じられた工場が舞台。病身の社長・東野英治郎、現場責任者・佐分利信やその部下・安部徹らが一致団結して目的を達成する。
マキノらしいというか、松竹らしいというか、工員たちの不平不満などもきっちりと描いている。例えば、斎藤達雄などは、リューマチを理由に夜勤をサボり居酒屋で飲んでいる。そこを上司の河村黎吉に見つかる。河村は頭ごなしに叱るのでなく、逆手で飲め飲めと勧める。さすがに斎藤も飲めずに、翌日からは一生懸命働くようになる。てな具合である。
あるいは、水戸光子が兄・佐分利信に弁当を届ける、二つも。誰の分かと聞けば、恋人・安部徹の分だという。てな具合に、戦時高揚映画を隠れ蓑にして、庶民の生活をしっかり描いているのはさすがである。
ラスト、将校・小澤栄太郎が工員たちに向けて行うアジ演説は、誰もがホロリと感動させられ、これからも御国のために頑張ろう、と思うほどの見事なものであった。このようにして、庶民は戦争に巻き込まれていったのだ。大いに気をつけねば！
