ぴくちゃあ通信

日本映画をメインにしたブログです。東宝映画を中心に古い作品から新しい作品まで、時には俳優を中心に話を展開します。

『破戒』(松竹京都1948:木下惠介)


 『破戒』(松竹京都1948:木下惠介)を、国立映画アーカイブ(旧名称:フィルムセンター)長瀬記念ホール OZUにて見る。310円。再々見。

 東宝争議のため松竹に企画ごと譲られた作品で、東西の撮影所交流の第1回作品として、木下惠介が京都に出向いて撮った。木下はあえて島崎藤村の原作を読まず、部落差別問題よりも池部良桂木洋子が演じる恋人たちの苦悩に重点を置き、細やかな自然描写とともにみずみずしい青春映画に仕上げた。(NFAJのパンフより)

 池部良の著書「そして夢にはじまった」を読むと、復員してきて茨城県で病気療養中のところに、東宝から俳優復帰の誘い。それを無視していたら、高峰秀子市川崑と連れ立って阿部豊監督の『破戒』出演依頼。やっと重い腰をあげて俳優復帰したとのこと。
 東宝でクランクインした『破戒』は監督・阿部豊、脚本・久板栄二郎、丑松・池部良、土屋銀之助・大日方伝、お志保・高峰秀子。すぐに東宝争議が始まり、製作中断。企画は松竹へ。

 今回改めてみると、差別反対と声高に主張しているわけではないけど、戦後すぐの作品ということもあり、差別撤廃への道は明るい、という希望に満ち溢れたエンディングになっているのが、よくわかる。
 差別の不合理さを描いているという点から見れば、市川崑監督・市川雷蔵主演『破戒』(大映京都1962:市川崑)のほうが優れている。でも大映特有の暗さも加味されて作品のトーンがどんよりと暗い。暗いだけではなく、未来への明るさもあまり感じられず、差別社会が蔓延している21世紀の日本を予言していたのかな、と思うほど。
 ともあれ、木下惠介『破戒』のラスト、池部良桂木洋子が二人で力を合わせて滝沢修・村瀬幸子夫妻の道を継いでいこうと決意する明るさが大好きである。


2018年8月16日(木)

       スタッフ
監督         木下 惠介
脚本         久板栄二郎
原作         島崎 藤村
製作         小倉浩一郎
製作顧問       松本治一郎
撮影         楠田 浩之
音楽         木下 忠司
美術         本木  勇
録音         高橋 太朗
照明         村田 政雄
編集         相良  久
助監督        小林 正樹、滝内 康雄
演奏         中沢寿士楽団
装置         中大路義一
装飾         不破 敏夫
衣装         中村 ツマ
床山         井上 照夫
結髪         後藤キクエ
移動効果       山下 直一
スチール       田中 辰男
記録         川地 博子
進行担当       森 伸三郎
撮影助手       荒井満次郎
照明助手       蒲原正次郎
録音助手       奥村 泰三
美術助手       鈴木 貞夫


       キャスト
池部  良      瀬川丑松
桂木 洋子      お志保
滝沢  修      猪後蓮太郎
村瀬 幸子      同夫人
宇野 重吉      土屋銀之助
山内  明      勝野文平
菅井 一郎      風間敬之進(お志保の父親)
加藤  嘉      郡視学:
清水 将夫      町会議員・金縁めがね
小沢栄太郎      高柳利三郎
永田  靖      町会議員・白ひげ
東野英治郎      校長
東山千栄子      寺の奥さん
薄田 研二      丑松の父
松本 克平      丑松の叔父
寺島 雄作      小諸の町会議員
玉島 愛造      僧侶
青山  宏      部落の青年
西川 寿美      高柳夫人
岡田 和子      丑松の叔母
村上 記代      旅館の女中
関谷 芳江      女教員
保瀬英二郎      男教員
加藤 秀樹       〃 
笹川富士夫       〃 
宮武  要      下宿の亭主
若  修作      下男
藤田  良      旦那
片山 一郎      呉服やの番頭



99分・35mm・白黒


公開は、
1948.11.30 国際劇場 一般封切 12月6日
11巻 2,717m 白黒