『わが映画人生鍛冶昇監督』(日本映画監督協会2007)

以上、『おゆきさん』(日活1966：鍛冶昇)より

　『わが映画人生鍛冶昇監督』(日本映画監督協会2007)を、国立映画アーカイブ(NFAJ)長瀬記念ホール OZUにて見る。「逝ける映画人を偲んで 2021-2022」特集の１本。310円。

わが映画人生鍛冶昇監督(135分・DCP・カラー)
2007（日本映画監督協会）（出）鍛冶昇（インタビュアー）蔵原惟二
　少年期における壮絶な戦争体験など、青春映画の名手・鍛冶昇(1931-2021)の知られざる一面が明らかになる「わが映画人生」シリーズの一本。1954年に製作を再開した日活に助監督として入社し、市川崑、山村聰、齋藤武市らに師事した鍛冶が、和泉雅子主演の監督デビュー作『おゆきさん』(1966)以降の主要作を飾らない語り口で振り返る。
(以上、国立映画アーカイブの解説より)

　1931年８月８日、三重県桑名市老松町生まれ。海辺に近いところで食堂経営の実家で祖母に育てられる。複雑な家庭の事情で鍛冶家の養子となる。その際、東京に移り住んだのか、何歳から東京人となったのか。小学校中学校ともに方言をからかわれたコンプレックスからきれいな標準語を話したい、という目標を掲げて、NHKアナウンス学校に通ったり、、、。ということは小学校の何年生からか、、。中学１年の３月には東京大空襲を体験。
　高校時代あたりからは、英会話を習い、アテネフランセに通ったり、いつかはフランスへと行きたい、という思いから。
　1950年東京都立豊多摩高校卒業、慶応義塾大学文学部仏文科入学。在学中に東宝シナリオ研究所の数名規模の募集に合格して毎週課題提出に通う日々。東宝撮影所に入る道もあったが、古いスタッフがいっぱいいるのでどうしようか、と思っていたら日活助監督募集が行われ、合格して1954年３月大学卒業。４月日活撮影所助監督部入社。同期は、前田満洲男、浦山桐郎、西村昭五郎、武田一成、白鳥信一、藤浦敦、ら。10月入社組は、江崎実生、樋口弘美、吉田憲二、柳瀬観、熊井啓、ら。
　大学の同期に堀久作社長の息子・雅彦がいて、彼の入れ知恵なのか、最初は神田日活、丸ノ内日活、と営業回りをして、撮影所に配属になったのは７月から。『黒い潮』(1954.08.31：山村聰)が最初の助監督作品。チーフが鈴木清太郎(清順)、セカンドが今村昌平、サードが浦山桐郎、その下のカチンコ担当だった。次についたのが佐伯清監督。この現場で映画製作の楽しさを教わる。具体的な作品名は挙げなかったが、『からたち日記』(1954.10.26：佐伯清)だと思われる。続いて『美男お小姓　人斬り彦斎』(1955.01.02：佐伯清)についたかは不明。
　当時、水がつく監督は鬼門といわれていた。古川卓巳、西河克己、川島雄三、市川崑、、、。川島組に付きたかったが、チーフ・今村昌平、その下が浦山桐郎、というラインが決まっていたので、市川崑組につく。以後、日活で撮った市川崑作品はすべてつく。『太平洋ひとりぽっち』(1963.10.27：市川崑)ではチーフ助監督かつ私設秘書までやっていた。
『東京オリンピック』(1965：市川崑)でも、谷川俊太郎(高校が同期)も撮るから、お前もなんかの競技を撮れと言われた。当時、同期が次から次に監督昇進していたので、これに関わったらまた監督昇進が遠ざかると思ったので断った。案の定、烈火のごとく怒られた。
　後年、「四騎の会」が立ち上がり、テレビドラマを作ることになった。木下惠介が「でっかい母ちゃん」４話、次が小林正樹「化石」８話、そして市川崑が「ただいま浪人」11話。これはキャスティングからすべてやらされた。１話だけ市川崑が撮って、あとは全部自分。当時、京都で「木枯し紋次郎」も撮っていたので、毎週のように東京と京都を行ったり来たり・・・。

　と、まあ、135分しゃべりっぱなし。インタビューの蔵原惟二がはるか年上に見えるくらい、鍛冶昇監督は若々しくエネルギッシュ。弁舌さわやか、インタビュアーが、なにか尋ねると(それも語尾がごにょごにょと何をいっているのかわかないのに)、その意を理解して、すぐしゃべり始める。
　これで、脳梗塞で倒れた人とは思えない元気さ。
　海外生活10数年のエピソードや、監督デビュー前後の話、テレビ業界での大活躍、、、等々、おもしろすぎる。
　映画監督作品が７本しかない人、とちょっとなめていたが、とんでもなかった。反省、反省。
　この続きは、いつか、、、。
2023年７月９日(日)鑑賞